骨太(ほねぶと)神社の境内にある岩口家と神社際面を挟んで切川の父が開設した切川クリニックはお隣りだから、岩口と切川は垣根越しに時折り話をしていた。だが、うどん屋[矢尾卯々]で話す口調は自ずと違っていた。垣根越しでの会話はフツゥ~のご近所言葉だったが、神事に関連した宮司と氏子総代としての会話時は、立場上の格式めいた言葉遣いが遣り取りされていた。宮司姿でペラペラと世間話は品位を欠くから、当然と言えば当然と言えた。
うどん屋[矢尾卯々]で腹を満たした三人は、しばらくして午後のお札配布を開始した。
「矢尾卯々のうどんは、いつもながら美味いですなぁ~」
「確かに…」
宮司装束の岩口は多くを語らず、ひと言だけ応じた。切川に従う砥石は、縦一列で歩く最後尾である。その砥石が、ポツン! と口を開いた。
「いいお天気でよかったですね…」
「これっ! 余計なことを言うんじゃないっ!」
切川が院長的にお付きの若手スタッフである砥石を窘(たしな)めた。
「すみません…」
窘められた砥石は、借り物の猫となった。
「いいじゃないですか、いい天気なんですから…」
岩口が砥石を庇(かば)った。
「はあ、まあ…」
切川も借り物の猫ではないものの野良猫状態となり、勢いを失速した。^^
続