2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧
「おはよう…。おっ! 岸田君のお従兄妹さんでしたか。…まっ! それはそれとして、入口で警備員の矢車(やぐるま)さんに冷やかされたよ。ノーベル賞がどうのこうのってさ、ははは…」『おはようございます。私は若林の従兄妹です』「そうでしたっけ? 若林? …
『ならば、天常(あまとこ)様はどのようにされるお考えですの?』 天照大(あまてらすおおみ)神が、やんわりとお訊ねになった。『ここは、防ぎ手の枉神(まがかみ)を陰ながら支援する他はありますまい…』『それは何故(なにゆえ)でございます?』 比売(ひめの)神…
『来るべきものが来たようね。まさに、目に見えない敵だわ。ガードしようがない』 保の横に並んだ沙耶が静かに言った。保は、「ああ…」とだけ呟いた。「おはよう…。んっ!? また連れてきたのか…」 研究室には、いつものように但馬が先に来ていた。『おはよ…
枉神(まがかみ)にもいろいろと存在する。悪悪い枉神からチョイ悪の枉神まで枉神まで多種多様なのだ。岩口周辺の三竦みを乱そうとしている枉神は、まだ枉神としては悪さが小ぶりで、神から見ればの悪悪いという存在ではなかった。『ほう! 枉神が困っておるよ…
修正プログラム違反だが、まっ! いいか…と、保は無視することにした。 保はいつものようにマンションを出た。少し後ろを保をガードする形で沙耶が続く。完璧なボディガードだ。番記者は近くに潜んで保を窺っているようだが、幸い、近づく素振りは見せなかっ…
一方、こちらは黒雲の上で考える枉神(まがかみ)である。枉神は半ば、諦(あきら)めていた。と、そのときだった。『枉神様、申し上げますっ! 』 足がないからバタバタするではなく、スゥ~~ッと近づいてきた側近の僕(しもべ)が慌てながら近づき、枉神を窺っ…
「要は、今日から俺のボディガードを頼むってことだ。警察ならSP!」 保は快活に言った。マスコミなど、沙耶にかかりゃイチコロで、なんの問題もないことは保が一番よく知っていた。なにせ、彼女には言語認識システムがあるのだ。会話する相手の言葉で、相…
職場が明るくなったことで岩口が働きやすくなったことは確かである。。むろん、新しい課の職務は一から覚えねばならなったが、他の職員とは異なり、住民と直接、対峙することは稀(まれ)だったから、岩口としては大いに助かった。『これでは、とてもじゃない…
「いや、どうってことないさ…」 実は嵐を呼ぶ波乱の幕開けなのだが、保はこの段階ではまだ知らない。ただ、沙耶は藤崎の控えめな言葉に、大波乱の前兆が言語解析システムで分析していた。『そうかしら…。なら、いいけど』 沙耶は保を心配させまいと意識を伏…
「それにしても、あれだけ暗かった健康福祉課がね。不思議だなぁ…」「それは言えます。私も原因が見当たらないんですから…」「神業(かみわざ)かも知れんよ。知床旅情。はっはっはっ…これは冗談だがね」 それを聞いたとき、岩口はそれもアリか…と思った。以前…
『は~い!』 沙耶がアグレッシブに動いて玄関へ出ていった。ドアスコープの向こうには、いつものボケ~っとした顔で、藤崎が立っていた。「いや~、この前は、どうも。新聞ば見ましてね。岸田さんは?」『岸田さんですか? はい、おられますが…。お呼びしま…
上戸町役場近くにあるファミレスである。 異動した福祉部長の設楽(しだら)と、同じく異動した健康福祉課長の岩口が美味しそうな料理を食べている。 「もう慣れたかい? 弥生貝塚」 「ええまあ、それなりに…」 岩口は曖昧に返した。 「私も、それなりにだよ、…
気分よく浴室を出ると、沙耶が近づいてきた。『さっき、中林さんから電話があったわよ』「なんて?」『さあ? かけ直すって…。たぶん、新聞とかテレビじゃない』「あっ! そうか…。今、俺達は渦中の人だからな…」 自動補足機のニュースは、この時点で多かれ…
係長は、大相撲でいえば前頭筆頭の地位にあり、係長[非適=管理職ではない職員]以上は、いわば大関、関脇、小結の三役に相当した。ただ、課長が三場所負け越せば[不成績で]大関を陥落するということはない。^^ そんな課内で岩口は新しい職務を覚えようと懸…
沙耶のボランティア活動も、この分なら当分、無理だな…と保は落胆した。しかし、沙耶のことがマスコミに知れた訳ではなく、直接の影響は保のマンション周辺までは及んでいないのだ。そう思えば、沙耶が言ったとおり、教授におんぶ、でやるしかないか…と思え…
天界でふたたび神々サイドと枉神サイドのバトルが展開していようとは露ほども知らない岩口は、雰囲気がよくなった健康福祉課の課長として頑張っていた。「ははは…これは私がやっておきます。課長は決裁印をお願い致します」 課長補佐の鉄棒が、鬼ではなく仏…
この夜の記者会見は但馬の周到な根回しによるもの、というより、内容そのものが興味深かった…ということもあり、大盛況のまま終息した。しかし、物事はこれだけでは済まない。次の日から京東大学大学院・山盛研究室がある新館入口には多数の報道陣が入れ替わ…
枉命(まがみこと)は自身の能力のなさに少し項垂(うなだ)れながら返した。『そなたの業(わざ)は、それほどのものか?』『いえ、決してそのような…』『それは、そうであろう。この儂(わし)が枉命(まがみこと)候補の中から選任したのじゃからのう…』『はい…』『…
この日は教授の命令で全員、背広を着用していた。保も随分前に買った一張羅(いっちょら)をクローゼットの隅から沙耶に出してもらい着て出かけた。「協同通信の蚤谷(のみたに)です。今回、発表された自動補足機は、大々的に企業とタイアップしていかれる…
健康福祉課の雰囲気が急変したことは枉命(まがみこと)も不審に思っていた。『妙だな…。これは枉神(まがかみ)様に知らせておく必要がある…』 そう思わなくてもいいのに思った枉命は枉神にテレパシーを送った。『枉神様、枉神様、どうぞ…』 枉神は霞(かすみ)を…
「この話は俺の研究所の問題が片づいてから進めよう!」『あの自動補足機ってやつ?』「ああ、ついに記者会見だ。講師の但馬さん、偉く張り切ってる。勇み足しなきゃいいが…」『教授に、おべっか、ばっかり使う人?』「そんな言い方はよくないが…そのとおり…
その後、課員達が続々と出勤してきたとき、岩口は課内の異変に気づかされた。課員全員が明るいのである。中には鼻歌をハミングする職員もいた。岩口は何かあったのか…と最初は思った。ところが、別にこれといった変化もなく昼過ぎになった。 岩口が食堂の配…
「どうって、美味かったよ。ごちそうさん」『ひと言、そういうの欲しいのよね』 はは~ん、京東大学の女子学生のデータだな・・と保には思えたが、敢(あ)えて沙耶には言わなかった。「ごめん! 次からな、ははは…」 笑って暈(ぼか)すと、保は新聞を手に…
枉神(まがかみ)の目論見は甘かった。天常立(あめのとこたちの)神が神幣(かみぬさ)に与えられた呪文は枉神の枉事(まがごと)を、ことごとく消し去ったのである。そのことに枉神や新任の枉命(まがみこと)は気づいていなかった。『そろそろ岩口さんの生活に狂い…
それから一時間が経過し、チップの交換は無事終わっていた。すっかり疲れた保はバスルームで浴槽に浸かっていた。━ なんでも屋か…。ボランティア活動なら問題はないだろう… ━ 湯霞(ゆがすみ)の向こうに沙耶が懸命に動く姿が、ふと浮かんだ。むろん、脳裡に…
課長補佐の鉄棒に課内の現状を説明された岩口だったが、新任課長としてともかく職場に慣れなければならなかった。さらに、健康福祉課の仕事は白紙状態で、これも覚えねばならない。岩口の日常生活は、異動前の三月までと異なり、負担が大きく増えようとして…
だが、よく考えれば、妙齢の女性なら化粧をしない方が怪(おか)しいのだ。今まで、化粧しなかった沙耶が、どうして? と、保は疑問が湧いた。気づいたとき、保は沙耶の部屋へ入っていた。部屋では馴れない仕草で沙耶が顔に化粧品を塗りたくっていた。保はそ…
春、四月、岩口は健康福祉課長として新たに赴任した。「岩口です。皆さん、宜しくお願い致します…」 岩口は手短に就任の挨拶を課員一同にした。枉命(まがみこと)が課内の雰囲気を悪くし尽くした後だったので、課内の岩口に対する歓迎ムードは暗く、それほど…
悪いタイミングだ…と、保は少しイラついたが、仕方なく玄関へ出た。 ドアスコープから覗(のぞ)くと、相変わらずポケェ~とした顔で藤崎がドア前に立っていた。「はい、今開けます」 保はドアを開けた。チェーンは沙耶が戻ったとき話に夢中になり、かかって…
岩口は小さく呟くと、設楽(しだら)に軽く頭を下げ、部長室を出た。予想していたためか、気分はそれほど落ち込まなかった。「どうでした、課長?」 観光物産課へ戻ると、砂場が待ち構えていたように声をかけた。「予想したとおりです…」「異動ですか…。ようや…