水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

幽霊パッション 第三章 第五十回

『ああ、そうでしたね。僕も、そのことをお聞きしなきゃなりません』 双方とも、情報は持っていた。「君の方は?」『はい。僕が朝早くから伝えておこうと現れたのは、そのことなんですが…』「ほう、どんなこと?」『僕と課長の今後の活動へのアドバイスを霊…

幽霊パッション 第三章 第四十九回

幽霊の身には、待つことも決して苦ではない。そこが人間界と霊界の違うところである。霊界には時の経過という概念がないからだ。幽霊平林が、かれこれ小一時間もプカリプカリと漂っていると、辺りは白々と明け、東の山際の一角に朝陽が射した。実は、この時…

幽霊パッション 第三章 第四十八回

『記憶が残っておれば厄介なことになるのでは…』『ははは…、そのようなことを心配せずともよいわ。ただちに、とは申さぬが、首が座り、一、二年も歳月を重ねれば、自然と忘れさろうよ』 幽霊平林は厳かな霊界番人の声を、ひれ伏した平伏姿勢のまま聞き入って…

幽霊パッション 第三章 第四十七回

「ご謙遜を…。私も滑川(なめかわ)教授と話し合う機会があり、あなた方のことは今じゃ百パーセント信じております」 佃教授は上山に缶コーヒーを奨めながら、そう云った。 その頃、霊界の幽霊平林は霊界番人の訪問を受けていた。この、訪問などと表現出来る…

幽霊パッション 第三章 第四十六回

「上山さん、このスイッチをONにすれば霊磁波ビーム装置のビーム量を、…つまり霊動力の強弱を自由に変えることが出来るんです」「ほお~、霊磁波ビーム装置って、いつやらマヨネーズへ照射された装置ですよね?」「ええ、あちらの装置室にある装置です」「…

幽霊パッション 第三章 第四十五回

「それはそうと、ゴーステン効果はその後、どうですか?」「いやあ~、お恥かしい。これといって進展はありません」「そうですか…。せめて霊動力を制御していただければ、私としても希望が持てるんですが…」「ああ、ゴーステンの霊動力制御ですか? それは、…

幽霊パッション 第三章 第四十四回

「お久しぶりです、上山さん。その後、どうですか、あの方(ほう)は…」「えっ? ああ、まあまあ、ってとこです」 上山が佃(つくだ)教授の研究所を訪れると、教授は入口で出迎えてくれた。教授の助手も、この日は二人いた。「お二人は、お休みですか?」「…

幽霊パッション 第三章 第四十三回

「本当だな。いい先生だよ、実に!」 上山はテンションを上げて微笑(ほほえ)んだ。『今回はこれでSF映画が現実になりますねえ』「ああ…。それにしても、君の如意の筆は恐るべしだ」 上山はテレビをオフにしながら幽霊平林を天井ぎわへ昇って漂う幽霊平林…

幽霊パッション 第三章 第四十二回

「一時間前、発表されたリブストン大学のアレン・ストック博士の会見によりますと、スペース・コロニー理論に端を発した発見が新(あら)たにされました。具体的な詳述は学術的見地から避けられたものの、人類に新しい宇宙時代の到来を告げるものとして、実…

幽霊パッション 第三章 第四十一回

「よし! 世界中の科学者に能力を与えるよう念じてくれ」『能力を与えるとは?』「だから、発明、発見の潜在能力を、だよ」『課長、それだと人工重力以外の分野も含まれますが…』「ああ、だから人工重力の発明と念じりゃいいじゃないか」『はい…』 幽霊平林…

幽霊パッション 第三章 第四十回

「だろ? 現実は、宇宙ステーションを含めて、プカリプカリだわな」『ええ、それは云えます。1Gの人工重力を生み出す発見、発明は、されてません』「私は正に、こういうのがノーベル賞だと思うんだよ。最近の賞の軽いこと、軽いこと。もらった人が悪いとは…

幽霊パッション 第三章 第三十九回

『それで、どうだったんですか?』「ああ…、早い話、私と君が目指していたのは、大きな影響を与えることだということさ。大きな影響を与えなければ、霊界からストップもかからないと、こうなる」「はあ、それはまあ、そうですよね。で?」「だから、教授が云…

幽霊パッション 第三章 第三十八回

「ありがとうございます! 貴重なご意見、感謝致します。今日、教授を訪ねてよかったですよ」「そうかあ? なら、いいがのう…」 その後、しばらく世間話や佃(つくだ)教授のその後のことを訊(き)いたりして、上山は時を過ごした。教授の研究所を出ると、…

幽霊パッション 第三章 第三十七回

「ほう…、何をされた? 実に興味深い話だ。どんな暗示かね?」「いや、暗示というより、私の身に危険を及ぼした、と云った方がいいでしょう。分かりやすく云いますと、私をゴーステンの時よりさらに一歩、霊界の狭間(はざま)へ近づける暗示をしたのです」…

幽霊パッション 第三章 第三十六回

「滑川(なめかわ)教授か…。そういや、ゴーステンのとき以来、お会いしてないな。そうしようか…」 ようやく二人(一人と一霊)の話に結論が出て、この日は解散となった。 上山が滑川教授の研究所を訪ねたのは、その二日後である。丁度、田丸工業が創業記念…

幽霊パッション 第三章 第三十五回

『長居は、すまい…。もうちと熟慮して事をなせ! ではのう…。数分後には、そなたの上司、元へ戻るであろうよ…』 それだけを云い残すと、霊界番人の声は途絶えた。「なんだって!?」 上山にすれば気が気ではない。自分の身が危ういのだからそれも当然で、声…

幽霊パッション 第三章 第三十四回

「食糧増産は飢餓に喘(あえ)ぐ民族の救いにもなるしな。ただ、地球に生存する人間すべての発想をそうするとなると難しいぜ」『衣食住は人類に不可欠ですが、今は食が弱ってる時代ですしね』「そうそう…。有る地域にはあるが、無い地域にはない。総じて、足…

幽霊パッション 第三章 第三十三回

「出来るだろうかね?」『如意の筆の霊験なら、何の問題もないとは思うんですが…』「ですが…とは?」『ええ、念じ方が問題になると思うんですよ。詰めないと…』「ああ、そりゃそうだな。少し考えようや」 そういうと、腹が空いたのか、上山は立って厨房の方…

幽霊パッション 第三章 第三十二回

「本格的に考えないと、私の身も危ういからなあ。実は、社長に会って、会社を辞めさせてくれと云ったんだよ」『ええっ! それで?』「結論から云やあ、慰留されて、撤回したんだがな…」 上山は事の仔細を話した。『まあ、よかったですよ、辞められずに。課長…

幽霊パッション 第三章 第三十一回

「そりゃ大変だ! 君としては生死にかかわるな。仕事の失敗どころの話じゃない」「はい…」 その時、ウエイトレスが注文のコーヒーとミルクティを運んできた。田丸は、そのミルクティを一気に半分ほど飲み干した。やや狼狽していたということもあったが、上山…

幽霊パッション 第三章 第三十回

そんな生半可な仕事をしているうちに昼となり、やがて退社時間となった。上山の心の中には、一日の中で漠然と考えた一つの発想が次第に具体化しつつあった。上山の足は、どうしたことか社屋の外へは向かわず、社長室へ進んでいた。その社長室へ上山が入ろう…

幽霊パッション 第三章 第二十九回

列車が駅構内へ静かに止まると、上山は、「水、清ければ魚、棲(す)まず、か…」と、呟くように吐き捨て、座席を立った。 その日は仕事が手につかない上山だった。幽霊平林とこれから何をすればいいのか…と、このことばかりが頭を離れない。「課長! どうか…

幽霊パッション 第三章 第二十八回

「いや! それは、やめておこう。奴は奴だからな。迷惑はかけられん」『その人は、元大臣でノーベル賞をとられた方じゃ?』「ああ、そうだ。国民栄誉賞とかもな。今や名誉町民で、社長らしい」『そんな偉い方なら、ましてや、ですね』「ああ、そういうことだ…

幽霊パッション 第三章 第二十七回

『ああ、そうでした。課長の身が危うい』「危うくはないんだろうが、不安だ」『何をゴチャゴチャお前達は云っておるのだ。…まあ、そういうことゆえ、お前達の今後の行いが改まったと霊界司様がお認めになれば、自然とその者の状態は元に戻るであろう』『はは…

幽霊パッション 第三章 第二十六回

『安心して下さい、課長。今の状態は霊界司様のご命令で霊界番人様がなされたことのようです。念力を解けば、すぐ元へ戻ると申されております』「なんだ、そうか…。それを聞いて少し安心したぞ。しかし、なぜそんなことを?」『はい。今、訊(き)いてみます…

幽霊パッション 第三章 第二十五回

「霊界番人様? …私には何も見えんぞ、君!」 上山は鋭い声で云った。『課長には聞こえません。ただ、僕にもそのお姿は見えてません』「なんだ、そうか…。しかし、この私は、どうなったんだ。君、訊(き)いてみてくれよ」 上山は少し不安げな大きめの声で幽…

幽霊パッション 第三章 第二十四回

『はい、確かに…』「まあ、それはそれとしてだ。現実に彼等が政治を掌握し、軍事力を駆使していることも確かだ」『それはそうなんですが、彼等は軍事面ですよね。地球上の温室効果ガスという物を撒き散らす国家の代表者は含まれてません。地球上の環境汚染は…

幽霊パッション 第三章 第二十三回

『んっ? …まあ、あるといやあ、あるんですが…』「どんなこと?」『ですから、僕と課長の思いどおりになるんですから、誤ったことは念じられないってことです。いつかも、そのことは話題になったと思うんですが…』「ああ…。そりゃ慎重に考えにゃならんわな」…

幽霊パッション 第三章 第二十二回

「ほお~、確かに結構、いるなあ、地球上の独裁者が…」『彼等が初めから独裁者という訳じゃなかったようですけどね。すべては、人間の本性の弱いところですよ。権力、地位、名誉、金を手にすれば、人間は変わりますから。まあ、人間の性(さが)で、仕方ない…

幽霊パッション 第三章 第二十一回

「正義の味方? そこを、もう少し、詳しく聞きたいが…」「いや、これは霊界トップの意向でもあるんです。実は、平林君が霊界では稀有(けう)な幽霊姿のままなんですよ。それを霊界トップは偉く興味をお示しになり、平林君に如意の筆をお与えになったり彼が…