水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -116-

「よかった! 子供達もこれからなんですから、お身体は大事にして下さいね…」
「ああ、分かってる…」、
 心配してくれるのは有り難いが、祭礼疲れの岩口としては少し小煩(こうるさ)く思えた。そこはそれ、『お風呂になさいます?』とか、あるいは『お食事になさいます?』などという疲れを癒(いや)すカンフル的な言葉が欲しかったのである。…分かります。^^
 その後、岩口は風呂に浸かり、ゆったりとした気分で祭礼用に美登里が作った鯖寿司や散らし寿司、焼き豆腐の煮つけ、竹の子と蕗の煮物+木の芽[山椒]、生ビールで明日の英気を養った。悠馬と智花はすでに子供部屋でゲーム機の人となっていた。子供部屋のテレビは小型だが、ゲーム機は使えた。さらにリビングの大型テレビも二人のゲーム場となっていたから、岩口としては二人のご機嫌を窺わなければ好きなBSの歌番組は観られない・・という哀れな状況だった。スマホ[スマートホン]が馴染まないガラケー[ガラパゴス携帯]一本鎗の岩口としては、スマホで観るというのも気分が乗らず、子供達の僕(しもべ)として窺う他はなかったのである。お家(うち)でも肩身が狭いんですねぇ~。^^
 翌朝も早くから岩口は忙しかった。平時の神社奉仕や町役場勤務に加え、祭礼の祭事が岩口を疲れさせていた。心身ともにである。
「おはようございますっ!」
 朝八時過ぎ、切川が小忙しくやってきた。
「ああ、切川さん。おはようございます…」
「後宴祭は十時からでしたが、氏子総代も今年でまだ三年目ですので…」
 濁した切川が言いたいことは岩口には分かっていた。まだ、慣れてませんので…という意味に解釈したのである。その通りで、まだ切川には慣れたゆとりが備わっていなかったのだ。
「九時過ぎでもよろしいのに…」
「ええまあ、そうなんですが、ご挨拶だけでもと思いまして…」
 医者の白衣姿とは違い、紋付き羽織袴に山高帽姿の切川を見て、朝六時には起きたな…と、普段着姿の岩口は瞬時に見通した。