岩口は、気にしなくてもいいのに黒原のことが少し気になっていた。海外旅行で不在のとき突然、やってきて、その目的も果たさぬまま意識を失い、自分がなぜ骨太(ほねぶと)神社を訪れたのか?ということさえ忘れて消え去った事実が不可解だったのである。
「あなた、どうかしたの?」
食事の手が進まない岩口を見て、案じた美登里が声をかけた。
「んっ!? いや、なんでもない…」
「そう…。なら、いいけど」
「お前、黒原さんのこと覚えてるよな?」
「黒原さん…どこかで聞いたことがあるわね。あっ! 巫女(みこ)の煮込さんが話してた遠い親戚筋の方でしょ?」
煮込蕗は海外旅行中、骨太神社の留守を任されていた。
「そうそう…。あの人のことが少し気になってな…」
「今、突然!?」
「いや、以前からだが、今日、また気になったんだ…」
岩口は包み隠さず、心の内を美登里に話した。
「そう…。でも、突然やって来て、倒れて切川さんのクリニックに担ぎ込まれたんでしょ。それに意識が戻ったら、ここへ来た目的を忘れてそのまま帰るなんて、怪(おか)しな方ね…」
「ああ…」
岩口は美登里が言うとおりだと思った。
「神具店をやっておられるそうだが…」
続