水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

里山家横の公園にいた捨て猫<活躍編> -7-

 ひと月ばかりがコトもなく流れ、ようやく暑気が後退し始めた9月初旬の朝が巡った。昨夜、里山のBS番組が放送された翌朝である。先に収録した一週間前の地上波放送ではコレ! といった反応もなく、平凡な日が流れていた。里山は肩透かしを食らった気分でテンションを下げていた。だがそれは、周辺が里山に意識させまいとするカムフラージュで、世間ではかなり小次郎の話題でもちきりだったのである。当然ながら、その現象は里山の社内にも及んだ。そして、この朝は格別だった。
「昨日のテレビ、観たぁ~?」
「ええ、観たわよ。猫がしゃべったやつでしょ?」
「そうそう! 信じらんない!」
 数人のOLが化粧室でぺチャくっていた。
「課長もスターだな。猫とのコンビで売れるぜ」
「だな。フフフ…」
 課内でも里山が座る課長席をチラ見しながら課員がヒソヒソ…とやっていた。もちろん、里山はそんな評判になっていようとは爪(つめ)から先ほども知らなかった。
 ようやく里山の耳にも期待していた一報が入った。里山は会社の課長席でその知らせを受けた。携帯はテレ京の制作担当プロデューサー、駒井からだった。
「さ、里山さん! ドエライことです! 視聴率がっ!」
「えっ? 視聴率がどうかされました?」
 期待していたことながら、里山としては、そこは駒井に言わせたかった。