水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

里山家横の公園にいた捨て猫<家族編> -3-

『大丈夫そうですね…』
「そのようだ…。早く、食っちまってピンポ~ンだ」
 里山は片手の人差し指で表門のチャイムを鳴らす仕草をした。
「お久しぶりざま~ぁす、里山さん。それに小次郎君…でしたかしら?」
 食後、車から降りた里山がチャイムで呼び出すと、しばらくして小鳩(おばと)婦人がみぃ~ちゃんを抱いて現れた。里山も小次郎を抱いていたから、出会いの形としては最高だった。小次郎はみぃ~ちゃんの手前、余り人間語で挨拶するというのも高慢(こうまん)ちきに思え、ニャ~とだけ猫語で鳴いて挨拶した。それでも、みぃ~ちゃんの耳には、『逢えたねっ!』と、聞こえた。みぃ~ちゃんも小次郎に逢いたかったのか、ニャ~と猫語で返した。意味は、『私も…』ぐらいの意味である。人間で言う、いい感じ・・だ。
「まあ、立ち話もなんざまぁ~す。どうぞ、お入(はい)り下さいまし…」
 小鳩(おばと)婦人は高級感が漂(ただよ)う香水(パヒューム)を、これ見よがしに匂(にお)わせながら、そう言った。
 小鳩家の邸内へ入り、里山と小次郎が最初に通されたのは、まるでベルサイユ宮殿を彷彿(ほうふつ)とさせる大広間だった。だが、邸内全体に空調システムが完備されているのか、まったく暑くも寒くもない快適さなのだ。その一角にある王朝風の豪華な応接セットへ里山達は導かれた。里山も小次郎も、すっかり高級貴族扱いである。映画[吾輩は猫である]の木邑(きむら)監督に一目、置かせたのも頷(うなず)けた。