
上山がグルリと首を回すと、素早い反応で幽霊平林がスゥ~っと躍(おど)り出た。駅の夕暮れは乗降客が多い。
「おお! 君。・・ここでは余り話せんな…」
上山は人目を気にながら小声で呟くように云うと、歩き始めた。当然、幽霊平林も従ってスゥ~っと流れる。
『僕、考えてみたんですが、ゴーステンの元である土を調べてみちゃどうでしょう』
「ゴーステンの元の土ねえ…。ということは、佃(つくだ)教授が採取している寺だな」
『ええ…、まあそうなります。分かりますかね?』
「そりゃ、教授に訊(き)けば分かるだろう」
『そうですね。ひとつ、お願いしますよ、課長』
「そうだな…。今、訊いてみよう」
立ち止まった上山は胸ポケットから携帯を取り出した。
「あのう…はい。いつぞや、お邪魔した上山です。その節は、どうも…。実は、折り入って先生にお訊(たず)ねしたいことがございまして…」
「はあ、なんでしょう?」
「実は、急にお訊ねするのも恐縮なんでございますが…、ゴーステンでご使用になられた土はどこのお寺さまのご境内のものなんでございましょう?」
「えっ? そのようなことを、なぜ?」
「いえね。ちょいと、お参りでもさせてもらえば、幽霊の平林君や私の状態も変わるんじゃないかと…」
「はあ、なるほど…。今、電話しておる私の自宅はご存知でしたよね?」
「ええ、それはもう…。つい先だって寄せて戴いたばかりですから…」
「ええ…。その私の自宅のすぐ近くなんですがね。照明山舞台寺(しょうみょうざんぶだいじ)というお寺なんですよ」