水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド  -28-

「取消しだっ! ああ、気分が悪い!!」
 吐き捨てるようにそう言うと、男はふたたび足早やに店外へ消えた。沙耶は男の残した名刺を不思議そうに見ながらバッグへ入れた。
『おかしい人。ほんとのことを言っただけなのに…。言葉には、確かにそう書いてあったわ』
 沙耶は席を立つと店を出た。
『そうそう…保が待ってるかしら』
 実は、この一件が波乱万丈の幕開けなのだが、沙耶はそのことを知らない。それは、彼女? の感知機能を超越した運命の悪戯(いたずら)だった。
 保は交番からトボトボとモンタナの店前まで戻ってきた。そこへエルドラドを出た沙耶がやってきた。二人は反対方向から接近し、ばったりと出食わした。
「沙耶! 勝手に…。どこへ行ってたんだ!」
 保は少し怒れたが、極力、落ち着こうとした。
『ごめんなさい! ちょっと変な男に出会ったの…』
「変な男?!」
『そう。私をモデルにどうかって。…勧誘よ』
「なんだ、そうだったか。…で?」
『で? って、それだけよ。保の了解がいるからって言ったら急に怒りだしてさ』
「んっ? なぜ? 何か言ったか?」
 保は沙耶の言葉が少し気になった。