水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド  -23-

 郊外試験はその後、保の休みを利用して二度、行われたが、取り分けて問題はなかった。保はこれで沙耶を普通に連れ出しても別に問題はないな…と判断した。大家であるマンションの管理人には、妹とルームシェアすることになったと一応、釘を刺しておこう・・と思った。言っておかねば、あらぬ展開に話がなる可能性もあるからだ。諺(ことわざ)どおり、[世間の口に戸は立てられぬ]だし、[転ばぬ先の杖]である。管理人に配慮した保の判断は正しかったが、沙耶の安全性に対する判断は少し甘かった。前夜、管理人に事情を話し、快い返事を得ていたから、問題が発生したその日の朝、保は心おきなく沙耶と外出しようとしていた。順調に事は運び、二人? はマンションを出た。そして地下鉄に乗った。この辺りまでは何の問題もなかった。問題が発生したのは、前に寄ったブティック・モンタナで沙耶の服を買って出た直後だった。その日も恐らく、沙耶が脱いだ服の紙袋を持たされるんだろう…と予想していた保だったが、予想どおりその日も持たされる羽目になった。やれやれ…と溜息を吐(つ)いたとき、保は俄かに便意を催(もよお)し、トイレへ行きたくなった。モンタナのドアを閉じた瞬間だったのが幸いして、保はモンタナのトイレに入ろうと咄嗟(とっさ)に思った。
「沙耶! ちょっと、トイレへ行ってくる。ここで待ってくれ」
 言葉が終らないうち、保の足はモンタナのドアを開けていた。