水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -139-

 最初に課へ戻ってきたのは、石が細かくなったような思考の緻密さを持つ課長補佐の砂場とキャリア・ウーマンでベテラン係長の餅尾弥希(もちお やき)なのに餅尾弥希(もちお みき)と名乗る餅尾だった。^^
「お帰り…」
 岩口は別に書けなくてもいいのに、ねぎらいの言葉をかけた。課員が出払った後に出たはずの砂場と餅尾なのに、帰りが他の課員達より早いのに少し驚いたこともある。
『食堂は混んでるだろうし…』
 岩口には思い当たる節(ふし)がなかった。
「早かったね…。店で食べてたんですか?」
「はい、知り合いがやってる店がありましてね。前もって何時頃行くってアポをとってるんです…」
 なるほど、そういうことか…と岩口はスピィーディーなUターンに納得した。
「課長は愛妻弁当ですか?」
「ははは…愛妻弁当っていう年でもありませんが…」
 少し照れ臭かったので岩口は笑って誤魔化した。その瞬間、岩口は美登里が作ってくれた弁当が食べられなくなったら…という少し前に考えなくてもいいのに考えていた岩口家の三竦(さんすく)みが崩れる構図をふと、思い出した。考えられるとすれば、上戸小学校のPTA会長として多忙な美登里に降りかかる異変である。病気、事故、多忙さetc.の様々な原因が考えられた。
『まあ、いいか…』
 岩口は考えなくてもいいのに考えることを、ふたたび断念した。それにしても、よく考える人です。^^