水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -242-

「ああ…岩口さん、ご苦労さんですな、源の判官(ほうがん)義経…」
「はあ? はあ…」
「分析は出来ましたか?」
「ええ、まあなんとか…」
 自分はまったく関与していないデータだったが、岩口は方便を遣った。そのとき枉神(まがかみ)が放った骨太(ほねぶと)神社をM&A的に乗っ取って岩口の骨太神社への奉仕と勤務体制を混乱させる・・という悪企(わるだく)みの枉事(まがごと)の霊力が部長室に漂い始めていた。
「…うっ!」
「ぶ、部長っ! いかがされましたっ!」
 設楽(しだら)が手を目元にやり、擦りながら頭を振る仕草を見て、岩口は思わず声を詰まらせ、心配げに設楽を窺った。
「いや…大丈夫です。烏賊(いか)は釣れました…」
 こんな不測の事態にもダジャレは忘れない設楽だった。設楽が平常に戻ったのは、なにも枉神が心理教唆によって設楽に憑く霊力が消えた訳ではなかった。天常立(あめのとこたちの)神様が枉神の霊力を封じた呪文が効いたのである。要するに、枉神の霊力×天常立神の呪文という目に見えない霊力のバトルだった。
「そうですか…」
「ご苦労さまでした。助役と町長に見せておきます…」
 設楽は岩口が置いた数値分析のファイルを手にしながら岩口に軽く頭を下げた。