二人がマンションを退去したのはその30分後だった。保は怪獣達の引き揚げにやれやれと思い、沙耶は何も思わず後片づけに余念がなかった。その夜はどっと気疲れが出て、保は缶ビールのロング缶を一本飲むと、すぐに寝た。沙耶には疲れたから・・と言い、沙耶も認識システムで保の疲労度が推し量れたから言い返さなかった。里彩で残った野菜カレーを冷凍保存し終えると、沙耶は自室へと戻った。
次の朝が必然的にやってきた。要は、保が疲れていようが疲れていまいが、太陽は刻々と巡るのだ。それが、黒雲に閉ざされていようがいまいが、おかまいなしなのである。
「保! 朝食、出来たわよ」
いつもの沙耶の催促である。今では自覚して起きられない保の唯一の起床条件になっていた。
「…、ああ…」
沙耶がドアを閉ざすと、保は重い上半身を起こし、ベッドから出た。欠伸をしながら窓ガラスの向こうに広がる眼下の街並みを眺めていると、昨日の出来事が嘘のように思えた。だが現実は過酷で、怪獣とその手下は確実にこの都心で朝を迎えているのだ。そう思えば、余りいい目覚め感はない。幸い、土曜ということもあり研究所へ足を運ぶ必要もなく、時間的なゆとりはあった。ただ、もう来ないとは思えるが、油断ならない二人が、まだ東京に存在した。