「お帰りなさい。外、賑(にぎ)やかだったわね…」
「ああ、朝のアレさ…」
里山は暈(ぼか)すと 靴を脱いで框(かまち)へ上がった。
「それで、どうだったの?」
沙希代は渡された鞄(かばん)を里山から受け取りながら、それとなく訊(たず)ねた。
「どうもこうもないさ…。だいたい、この小次郎が話す訳がない。なあ!」
里山はそう言いながら屈(かが)むと、同意を求めるように小次郎の頭を二度三度、ナデナデと撫でつけた。
『ニャア~~』
小次郎は、そのとおり! とでも言うかのように猫語で鳴き、里山を見た。
「だろ。なぁ~」
「そうよね…。あなた、早く着がえて。今日はスキ焼にしたから…」
「ほう! そりゃ、いい。ははは…」
里山は好物と聞いて機嫌よく笑って立ち、居間へ入っていった。当然、小次郎も付き従う。沙希代はキッチンに回った。
「なんとか巻けたぞ…」
『そのようですね』
小次郎は沙希代がいないことを確かめ、里山に小声で話した。
「ああ…」
里山の頭の中は、すでに美味(うま)いスキ焼きをつつきながらの一杯だった。