『えっ?』
小次郎の言う意味が理解出来なかったのか、股旅(またたび)は首を捻(ひね)る代わりに尻尾の先を少し上げた。
『僕にもよく分からないんですが、ご主人の弁だと立国だということです…』
『誰が?』
『僕が?』
『いつ、どこで、何のために?』
股旅は矢継(やつ)ぎ早(ばや)に小次郎へ問いかけた。
『いつもどこも、何のためかも分かりません…』
『それは、ちと、ご不自由でござるな…立国とは、大きく出ましたな。まあ、小次郎殿も風の噂(うわさ)にお聞きしたところでは、かなりの著名猫になられたようですからな。それも頷(うなず)けますが…』
『僕はそんな大仰(おうぎょう)なことは考えてないんです。みぃ~ちゃんと慎(つつ)ましやかに暮らせれば、それで十分なんですから』
小次郎は股旅に心の奥底の蟠(わだかま)りをすべて吐きだすように言った。
『立国でござるか…。どのような状況でご主人が話されたのか、もうちと詳しゅうお話をお聞きしたいですな』
股旅は穏やかな声で囁(ささや)くように言った。
『分かりました、お話しましょう。実は、カクカクヒシャヒシャなんですよ』
『ほう! カクカクシカジカではなく、カクカクヒシャヒシャでござったか』
事の発端(ほったん)となった状況は、すぐに股旅へ伝わった。