水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

幽霊パッション 第一章 第八十九回

                

『また興奮されたようですね。課長、安心して下さい。これは一過性のものです。決して、死にかけているとかそういうんじゃないんですよ』
 幽霊平林は宥(なだ)めるように云った。
「まあ、いい…。君の云うことを信じよう。それで、私は、どうすりゃいいんだ?」
『だから、何かの行動で、課長がそうなられたことは確かなんです。ただ、北枕で寝られた、ということが直接の原因なのかは、僕には分りません』
「そんな、あやふやな…」
『まあ、僕の霊界の知り合いにそれとなく訊(き)いておきますがね』
「ああ、…それは頼むよ。で、私は会社へ行って仕事をしてりゃいいんだろうか?」
『人間界と霊界の間におられる課長ですが、果して、人間界との接点が上手くいくのかどうか、僕にも分かりませんよ』
「今日は、昨日の続きをやってみるよ。で、どうなるかだ…。出水君も岬君も海堂君も、誰もいないんだからな。いや、いるが、私には見えないんだからな…」
『そういうことです。ここは、やるしかないでしょう。僕もいますし…』
「北枕だけの原因かどうかは別として、問題は元へ戻るか、どうかだな…」
 上山は徐(おもむろ)に幽霊平林へ云った。
『原因がそれだけなら、取り敢(あ)えず、先ほど云われたようにやって戴くしかないですね』
「…うん」
 上山にしては素直に云った。というのも、やはり多少の不安感がつき纏っていたからである。
『じゃあ、消えます! お邪魔しました』
「ははは…。じゃあ、消えますってのが、いいよな。でもな、マジックじゃないんだから、消えますは怪(おか)しいぜ」
『ああ、そうですね。失礼しました。では、また首を回して下さい』