水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

幽霊パッション 第一章 第百十四回

                

「はあ、そうですなあ…」
『課長! そんなことより僕が止まれる手立てを訊(き)いて下さいよぉ~』
 幽霊平林は蒼白い光を強めて、じれながら云った。
「おお、悪い悪い。今、訊くさ」
「えっ? 何をでしょう?」
「彼が申すには、止まれる手立ては何かないのか、ってことで…」
「止まる? …よく分かりません」
「ああ、そうでした。教授には、そこから話さねばなりませんね。実は、…霊界の者は静止して翌朝を迎えるようなのです」
『そのとおり!』
 幽霊平林が陰気ながらも陽気な声で合いの手を加えた。
「これは貴重なお話ですねえ。霊動学者として大いに参考になります…。で?」
「はい。その静止した状態で朝を迎えられない、ということだそうです」
「ということは、自分の意志で自分の身を動かせないってことじゃないですか」
『僕は、いったいどうなっちゃったんでしょうね?』
「君! ややこしくなるから黙って!」
「えっ? なにか?」
「いえ、なんでもありません。平林君に云ったまでです!」
「ああ、そうでしたか。失礼しました」
 佃(つくだ)教授はベッドの寝そべる角度を変えながら謝(あやま)った。
「いえぇ…、別に怒ってる訳じゃないんです」
「ええ、はい。で、その身を安定して止まれないか、って話なんです」
「今日のところは私としても即答はできないんですが、ゴーステンが解決の糸口になるのではと…」