水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

幽霊パッション 第二章 第四十九回

                

「このことは、やはり上山には伏せた方がいいだろう…という結論に達したとき、人間界の上山が幽霊平林を呼んだ。その瞬間、刹那(せつな)の閃(ひらめ)きが起き、幽霊平林は引き寄せられるかのように人間界へ姿を現した。そして、現れた瞬間、間髪入れず上山へ云った。
「課長! これ見て下さい」
 云い終わるや、幽霊平林は胸元へ挿した如意の筆を手に取ると、目を閉じて軽く振った。すると、どうだろう。上山の前に置かれた湯呑(ゆのみ)から湯気が上り始めた。
「なんだ! どうしたって云うんだっ! お前! …いや、君。神通力か何か、身につけたのか?」
『いえ、そうじゃないんです、課長。これです…』
 幽霊平林は霊界司から授かった如意の筆を上山の前へ差し出した。
「……、その輝く筆は、何だい?」
『霊界で授かった如意の筆という霊験あらたかな筆です』
「ほう、如意の筆か…。見ただけで何やらご利益(りやく)がありそうな筆だが、これがどうかしたのか?」
「はい。霊界司様は、これで人間界の大悪を滅せよ、と申されました」
「そんな大仰な…。私と君は、元に戻りゃいいと、ただそれだけで動いてきたんだぜ」