2026-01-07から1日間の記事一覧
「すんまへん。それでは本題に……。まず、犯人ってのが極度の人間不信に陥っていたと…、これが第一でんにゃ。犯人はリストラされ会社を恨んでいたんでっけど、まあこれは、ようある話ですわな。これは、事件には直接、関係してまへん。問題はその後(あと)でん…
そうと決めれば、自分で言うのもなんだが、私の行動は速かった。まず、悟君にはその旨だけを伝え、彼の行動分野に関しては継続活動とし、月に一度は現地取材に奔走して貰った。塩山と私の情報整理と分析の各セクションにおいては、作戦を練った結果、発想を…
翌週の土曜、三人は出会った。悟君などはもう、ウズウズしていたと言わんばかりである。私がメールした事件に関して何らかの情報を入手したのだろう。で、ウズウズな訳だ。一方、塩山の方は至極、冷静な面持(おもも)ちでやって来た。「正夫はん、持ってきま…
次の日、メールが入った。悟君(携帯画面1)からだった。と、暫(しばら)くして、塩山(携帯画面2)からも届いた。 携帯画面1受 信 メ ー ル 一 覧 ∥∥ ○! 報告です 怖いけど、面白いテーマです^^ 篠原悟☆ 001 4/14 17:30 サ ブ ▲ メニュ- ▼ 決…
古新聞を見ていると、スーパーボールの記事が目に飛び込んできた。サッカーなどでも同じなのだが、目的達成のため集団でオフェンスが相手陣のディフェンスを崩す訳だ。これはまさしく敵陣突破を目的とした火花を散らす格闘競技である。ブレーク・スルーだっ…
翌朝は晴れていた。私は昨日の残りのカレーを二人に出した。献立に苦慮したとき、私は決まってカレーにすることにしている。これが一種の習慣(habit)となっていたのだが、昨日のカレーは案に相違して、我ながら上出来だった。で、残りモノながら、二…
「最近の世の中、人間が時間に弄(もてあそ)ばれてるんじゃないですか? 私には、そう思えるんですよ」 塩山が違った角度からの発言をした。「と、いうと?」不意を衝(つ)く発言に、私は咄嗟(とっさ)に訊ねていた。「篠原さんが言ったことを絡めて考えてみる…
「八百半(やおはん)の娘とは、その後どうなってんだ?」「どおって、別にどないもなってまへんでぇ。沙貴ちゃんは僕の片想いでっさかい…」「同じ会社なんだからチャンスもあるでしょうが…告白できる…」 私が訊ねたことに、塩山も介入した。「ハハハ…、二人と…
データというものは蓄積をするというのが肝要だ、というのが私達の結論であった。単一の事象というのは、偶然に起こるということもあり得る。それが度々(たびたび)起こればそれはもう偶然ではなく必然である。データは、微細で取るに足らないことでも残す必…
そんな心の動きがあった所為(せい)か、「やっぱり、こちらにしよう」と、再度立って反対面のボックス席へ移動した。二人は怪訝(けげん)な表情を一時したが、それでも不満は漏らさず私に追随した。夫々(それぞれ)の注文をウエートレスが置いて去った後、私達…
さて、その後も私を含むアホ・バカ三人の研究所は的を得ぬまま続いていった。そして月日は流れ、立ち上げてから一年が経過した。 この一年の間に研究所は、ある種、妙な様相を呈していた。研究での会合の折には制服を着用することになったこと、そのために研…
「塩山さんの観察は、我々の研究成果の一つとして残せるんじゃないですか? 俺にもそう思えてますし…」と、私は口にした。「僕には難しいて、よう解りまへんわ…」 ボソッと吐いた悟君の表情は、どこか曇っている。「いいんだよ、別に解らなくてもさ…」と慰め…
次に三人が向かったのは、八百半(やおはん)の精吉っあんがボヤいていた新しく開設された大型スーパーであった。このスーパーが開店すれば、必然的に八百半への客足はこの店へ流れるだろう。すると、精吉っあんに入る現金が減る、という論法だが、彼がボヤく…
総じて、同じ対象において三人三様の観察結果が得られた訳だ。心象風景、換言すれば、人それぞれが持ち合わせる思考回路による映像が、全く異なった結果を想到させるのである。 寝っ転がって、何に束縛されることなく集中できたことが、各々の感性を引き出し…
有象無象の言の葉に、左へ右へと揺れ動く、水面に浮かぶ枯葉が三枚、それが私達なのだ。予測を超越する何か得体の知れない時空の流れに一喜一憂する私達…、私達とは言わずと知れた、塩山、悟君、それに、この私である。世間一般の人間から見れば、とても常人…
中断が解かれ、ふたたび会合の続きが始まると、最後になった塩山が観察結果を述べた。「それじゃあ、私が観察したものを報告します…」と、徐(おもむろ)に語り始めた。「お二人とも既にご存知だと思いますが、私は一度この町を離れた人間です。所謂(いわゆる)、世…
「判断っていうのも、人と対するとき、物事に対するときでは異なると…。まあ、今までの俺の観察で得た成果なんだよ」 私は悟君の方を向きそう言った。だが、その研究成果は枝葉末節になっていて、本来、私の意図していたゴフンという時間の研究とは大きく逸…
次に三人が一堂に会したのは、約束の二週間後であった。前回と同様に、私の家で開かれることになった。どうも二人の雲行きでは、今後も私の家が設定されているようだ。私としては別段、文句はないのだが、どうも二人は私が頃合いを見て出す食事に味を占めた…
二人が帰ると、すぐ静寂が襲った。それが無言で降りしきる雪と妙にリンクして、私の孤独感を増幅させるのだった。窓ガラスが雪明りに映え、明るさと気の昂ぶりで、その夜は眠れそうになかった。意地になって缶ビールを一気飲みして眠りについた。ところが、…
「精吉つぁんが忙しいので出られんので、あいつが親父の代理で出よりましてな。その折りに、なんやら偉そうなこと言うんで、僕も頭にきて怒ったんですわ。まあ、そのときの記録ですんや。勿論、そのときは興奮してまっさかい、家に帰ってから綴ったもんでっ…
「君は頭がいいからそう言うんだけど、結構そういうのって自分の身に起これば私のようになりますよ。村越さんは、どう思います?」「……、そうだなあ。時と場合によりけりでしょう。俺だって、”しまった”って思うことは、よくあります」 私へ矛先(ほこさき)が…
「一分刻みにしてあるが、当然、行動中は書けない。判断の起点となった時点からゴフン後に記帳することになる。だからゴフン後に一度、行動を停止しないといけない。本来はもう一名、補助者がいればいいんだが、そんな訳にもいかないからな…まあ、双子なら話…
「人間の判断ってのは、いい加減といえばいい加減だぜ。俺もさ、綿密な計算で染髪してりゃ、三日も寝込まずに済んだってこと。例えば、暖かい昼間にやるとか、忘れてたドライヤーを面倒がらずにかける、とかさ」「そうでんな…」悟君は素直である。「その考察…
現実でない架空の世界での夢物語なのだが、起きて夢のプロットを辿ると、強(あなが)ち私と悟君が研究しているテーマと類似性がなくもない。ただ、私達の研究では選択肢があるものの後ろへ下がることはなく、いずれかの判断をして前へ進むのだ。そこに介在す…
グルニエという喫茶店へ入った。フランス風の名前からして何か華やかな店内をイメージしたが、あい反して陰鬱(いんうつ)な暗い照明の店であった。まあ、逆に考えれば、落ち着ける雰囲気だったとも言えるのだが…。 後から判ったことだが、店名は“屋根裏部屋”…
「そんな大げさなもんじゃないけどな…」とは一応、取り繕ったが、言われたとおり、実は時間と人間行動の因果を調べ始めている私だ。中華鍋から香ばしい胡麻油(ごまあぶら)の匂いが漂う。「そういや、この前。ほや、二ヶ月ほど前のこってすけど、僕、馬券を買…
幸いにも、最初の一つは冷静に謝ったことで事なきを得た。それに、つい先程の車にしたって、私の駆ける速度が少し遅ければ…、恐らく撥(は)ね飛ばされていたのだ。私が軌跡を描いたそれぞれのゴフンという時間、その時間には諸々の起こり得る状況を含み、そし…