水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -104-

 岩口が祝詞(のりと)を上げ終えたとき、嚏(くしゃみ)が岩口を急に襲った。
「誰かに謗(そし)られてるのかな…」
 昔から嚏をすれば、回数によって一謗(いちそし)られ、二笑(にわら)われ、三惚(さんほ)れられ、四風邪(しかぜ)ひくと言われている。岩口は人に謗られるようなことはなかったはずだが…と訝(いぶか)しく思った。そのとき、ふと拝殿の板間の下に一枚の人形(ひとがた)が落ちていることに岩口は気づいた。それも去年の夏越(なこ)しの祓いの人形だから季節外れも甚(はなは)だしかった。
「…おやっ?」
 人形を板間の上へ置くはずがないのである。普通は三方(さんぼう)の上なのだ。
『しまった!』
 そのとき、天界の雲の上では天常立(あめのとこたちの)神がひと言、ボヤかれた。
『どうされました?』
 比売(ひめのかみ)神が訝(いぶか)しげに天之常立神を見遣った。
『いやなに…。人形を一枚、落としましてな…』
『あらまあ、ほほほ…』
『ほほほ…』
 二柱(ふたはしら)の女神は顔を見合わせてお笑いになった。神様でもうっかりミスをされるんですねぇ~。^^