水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -130-

 宮大工の棟梁柏手(かしわで)が指揮する柏手神装工務店の工事は見事なほど早く進んでいった。
 週末である。岩口は有給休暇を半日とって、工事の実況見分をしていた。
「まあ、見てのとおりです。これでもう、雨漏りすることはないと存じますが…」
 数人の宮大工が鉄骨の足場を撤収する作業にかかっていた。棟梁の柏手はそれを見守りながら岩口に小声で言った。
「簡単に済んでよかった…」
「ええ、中がまだ傷(いた)んでおりませんでしたので…」
「そうでしたか…」
「あと半年も経っていましたら、大ごとになるところでした…」
「と言いますと?」
「腐りますから、ひと月以上かかる大工事になったと思います…」
「それは、よかった。代金の方は?」
「総代さんから振り込むとのことでしたので…」
 切川が仕切り、工事の全ては岩口が知らないところで纏(まと)まっているようだった。