「んっ? そうだな。岸田君に助けてもらえば早いだろう。しかし、君の方の最終チェックは?」
「こちらは大丈夫そうですから…」
保は勝ち気な但馬のメンツを潰す訳にいかないから、少し曖昧(あいまい)に答えて、下手に出た。
「岸田、お前、本当に大丈夫なのか?」
保がいい感じで教授に近づいたものだから、但馬としては面白くない。今、ひとつ上のポストの准教授を狙う但馬は、何かにつけて教授のご機嫌取りになっていたから、保の横槍が許せなかったのだ。
「はあ、なんとかなりそうです。但馬さんのようにスンナリとはいきませんが…」
保は謙虚に返した。ふたたびの下手投げを浴びせられ、但馬は土俵に転がった。
「…そうか。それなら、いいんだが…」
その声を聞いた保は席を立ち、教授と後藤の作業場所まで近づいた。そして徐(おもむろ)に後藤の横へ入ると勝手に手指を動かし始めた。逆に教授と後藤の手の動きが止まり、呆然と保の指先に見入る。瞬く間にメカがスムースに動き始めたのは、それから10分少々したときだった。
「よくは分かりませんが、これでたぶん大丈夫だと思いますよ」
保は興奮する様子も見せず、至極、当然のことをしたといった表情で自席へ戻った。その保の動く姿を無言で追う教授と後藤だった。