水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド -43-

「あっ! 俺。今夜さ、ちょっと遅くなるから、食事いい」
『飲むのね。…早く帰ってね』
 沙耶には隠せんな…と、保は思った。すべてはお見通しなのである。解析システムが作動すれば、会話をした相手の情報は逐一、解析され、ほぼ100%の確率で理由が予測可能なプログラムが内蔵されていた。大統領や元首、更には天皇陛下や総理大臣ですらその対象外ではなかった。
「んっ? …ああ」
 保は軽く往(い)なして携帯を切り、腕を見た。6時を少し回っていた。頃合いだな…と思いながら、保は席を立つと研究室を出た。エレベーターを降りて館を出るとき、顔馴染みの老いたガードマンが、「お疲れさまでした」と、ひと声かけてくれた。無意識に、「お世話さまです…」と保は返していた。このガードマン、名前は? …と、ふと思えた。沙耶を作り始めた三年前より以前から大学の新館で見ている顔だが…と思いながら保は地下鉄へ向かった。冷麦(ひやむぎ)は一つ先の駅近くにあった。少し早いので、近くの本屋で技術の新刊を一冊、買った。保に技術書は必要ない。専門誌以上の知識と技量を持っているからだ。保が知りたかったのは、新しく開発された部品リストだった。ページをめくりながら、しばらく立ち読みし、買うに値する部品リストが見つかり買って出た。少し早い30分前だが、まあ、いいか…と思え、保は冷麦へ入った。