水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド -66-

保は名札を受け取ると横に立つ沙耶へ渡した。沙耶はそれを左胸に付けた。昨日と、まったく同じパターンである。
 エレベーターで三階へ上がった後も、昨日と同じような展開が続いた。違ったのは会話の内容だけである。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう…。おやっ! 昨日の従兄妹さんか。もう大丈夫なんですか?」
『はい! すっかり…。有難うございます、ご心配をおかけしました』
「いえ~、ちっとも。さあ、どうぞ…」
 昨日と同じように、但馬は片手で応接椅子を示した。保は黙って二人の遣り取りを聞きながら、今のところは完璧だな、最後の課題は強力電磁作用か…と巡りながらロッカーを開け、白衣を着た。その課題が起こるかは、後藤と教授が現れてから決まることだ。昨日(きのう)のようなトラプルが、まさか立て続けに起こるとは考えられない。とすれば、後藤がヘマをやらない限り、強力電磁波を沙耶が浴びることはない訳だ。さらに考えれば、その強力電磁波が放出されないのだから、沙耶に組み込んだ新しい防御バリア、すなわち、電磁シールドのシステムは起動しない訳である。結果、最終試験は成立しないのだ。となると、強力電磁波を発する所は…と保は頭を巡らせた。
 沙耶が応接椅子に座ってから、昨日と同じで室内はお通夜となった。会話が途絶したのである。