大概のことは感情システムが処理して、冷静へと復帰させるからだ。
「沙耶、それで今日はどこへ行った?」
『スカイツリーと国会議事堂…』
「スカイツリーは分かるけど、国会議事堂って…行きたかったのか?」
『でもないけど、なんかさ、そんな気分になったから…』
保は沙耶の深層心理を知ろうとプロファイリングする精神医学の医師のように訊(たず)ねていった。沙耶の場合の異常心理とは、すなわちプログラムの欠損や欠陥を意味した。
「そんな気分ね…。で、何を思った?」
『東京の人口とか国会の詳細とか…』
「なぜ? 何か知りたいことでもあったのか?」
『いえ、別に…。ただ、なんとなく』
「なんとなくか…。ちょっと変だな。よくは分からんが、何かが感知してシステムに微細な異常を起こした可能性がなくもない」
『それって、私が故障してるってこと?』
「いや、そうとも限らん。一過性かも知れんしな。何か他に気になることとかなかったか?」
『そういえば…スクランブル交差点の騒音で少し、クラッ! ときたかな』
「騒音?」
『そう、雑踏の騒音…』
このとき保は、電磁波バリア(シールド)機能は付加したが、音波は…と気づいた。沙耶には心配させないように、すなわち洞察機能を働かさないようにせねば…と瞬間、保は思った。