水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -229-

『分かりました。このまま店へ戻ります、どうぞ…』
『はい、そうして下さい。ご足労をおかけしました、申し訳ありません…』
『いいえ…』
 列車に揺られながら枉命(まがみこと)とのテレパシーによる通信が途絶えると、黒原はそのまま黒原神具店への帰途に着いた。一方、上戸町役場にいる枉命の方は、枉神(まがかみ)の指令どおり岩口の勤務ぶりを見張り始めた。岩口の弱点が見つかれば、それを元にして三竦(さんすく)みを崩す・・所謂(いわゆる)、搦(から)め手から攻める見張りである。人間とは違い、食事の必要がなく見張れるのはいいですねっ!^^
 見張られていると見知らず岩口は机上の仕事を続けていた。
「餅尾さん、ちょっと…」
 岩口は前方のデスクに座るベテラン女子職員で係長の餅尾弥希(もちお やき)に声をかけた。餅尾弥希(もちお やき)なのに餅尾弥希(もちお みき)と名乗る超エリート女史である。
「はい…」
 パソコン入力を続けていた餅尾はタップする手を止めると、デスク椅子からスクッと立って課長席へ向かった
「何でしょうか、課長?」
「あの…この数値データなんですが、どうも私は苦手でして…。いつもは砂場君にやってもらうんですが、特休で休んでますから、申し訳ないんですが、分析をお願い出来ますか?」
「はい、分かりました…」
「出来れば、分析結果をコピーして私に…」
「はい…」
 餅尾は小さく返すと、岩口が差し出したファイルを受け取り、自席へと戻った。