それからしばらく日が経ち、人事異動の内示が上戸町役場の各課で発令された。
「岩口さん、部長がお呼びです…」
餅尾(もちお)弥希(やき)なのに弥希(みき)と名乗る餅尾が課長席に近づき、岩口に小声で囁(ささや)いた。
「ああ、そうですか。どうも…」
岩口にも薄々、異動か…と、お呼びがかかった内容は分かっていた。俎板(まないた)の鯉の気分で岩口は部長室へ急いだ。
「ああ、岩口君。実は、呼んだのは他でもないが…」
部長の設楽(しだら)が言いづらそうに岩口を窺った。
「異動ですか?」
「ああ、そんなんだ。四月から健康福祉課へ行って貰(もら)うことになった…」
「健康福祉課ですか…」
「ああ。そんなことだから、よろしく頼むよ」
「分かりました。心得ておきます…」
「すまんね。ようやく慣れたところだろうが、よろしく頼むよ…」
「はい…」
続