水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド  -167-

『実はさ、30分ほど前に来られたのよ』
「出たのか?」
『ええ…。働くなら、その前に人に馴れておかなくっちゃ、と思って…』
「そりゃ、そうだが…。で、藤崎さん、何だって?」
『私が駅前のスーパーから猛ダッシュで走り去るところを見たって…』
「いつのことだ」
『先週の日曜…』
 この時、保は沙耶の抑制プログラムを完成させ、次のメンテナンスに入れ替えようと、そのままにしていたことを思い出した。行動を慎む感情システムへの補足プログラムである。
「そうだ! 沙耶、まあ上がれ!」
 沙耶は玄関から上がらないで、そのまま話していたのだ。保に促され、沙耶はフロアへ上がった。
『なに?』
「お前の修正プログラムを入れ替えるぞ。停止してくれ」
『どうしても、今なの?』
「ああ、今だ。忘れないうちにチェンジしないと、偉いことになるからな。ダイニングの隅でいい。今、持ってくるからな」
 すでにプログラムはマイクロチップに記憶させていたから、チップを交換するだけの単純作業だった。沙耶は言われたとおりダイニングの片隅へ行くと、直立姿勢で停止した。保は交換チップを取りに行こうとした。そのとき、玄関チャイムが鳴った。悪いタイミングだ…と、保は少しイラついたが、仕方なく玄関へ出た。