水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -303-

『そんな心配はなさらなくても結構です。全ては私がテレバシーであなたを誘導しますから。どうぞ…』
『そうですか。それならまあ、そういうことで。どうぞ…』
『お疲れのところ、お邪魔しました…』
 枉命(まがみこと)は、確かに自分は邪魔だな…と思いながらテレバシーを切った。^^ その途端、黒原は深い眠りの底へと落ちていった。
 師走の半ばは、すぐにやって来た。まだ明けきらぬ早朝、ようやく完成した二十の三方(さんぼう)を軽トラに乗せ、ようやく黒原は発注する準備を終えた。
「あの…黒原です。これからお運びします。今からですと、たぶん昼前にはそちらへ着くと思います。宜しくお願いします」
『ああ、ご苦労様です。お待ちしております…』
「では…」
 岩口の声に、黒原はこの先の不安を隠しながら職人一人を助手席に乗せ、軽トラを始動した。
 こちらは骨太(ほねぶと)神社で待つ岩口である。この日は黒原神具店から納品があるというので、岩口は年次有給休暇を申請して二日間、休暇を取っていた。今の課長補佐の鉄棒はよく出来た職員で、岩口が宮司と二足の草鞋(わらじ)を履いて頑張っていることを知っていたから、前の課の砂場と同じように協力的だった。
「もう、そろそろ着くのかしら…」
「そうだな…」
 岩口は緊張気味だったが、美登里も気も漫(そぞ)ろで、どことなく動きがぎこちなかった。