水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

代役アンドロイド -210-

『書生として来てもらっておる、とでも…』
「X-1号・・じゃなかった。三井さん、すごいわ。よろしくね」
 里彩が手を差し出し三井と握手した。長左衛門も続いた。
「まあ今日は保も帰っとるから、ややこしゅうなると、いかんでな。様子見は、わしと里彩だけにしよう。それに、メンテナンスの心配もあるでな」
 メンテナンス機能では、沙耶の方が十日間隔だから遥かに勝っていた。
『分かりました、先生! では、今日のところは停止させていただきます』
「三井さん、その言い方は、どうかしら?」
 里彩が可愛い眼鏡を少しずらせる素振りで見上げて笑った。
「ははは…そうじゃ。三井、一本取られたのう」
『すみません。以後は注意いたします』
 X-1号改め三井は隅へトコトコと歩くと、停止して両眼を閉じた。「ゆっくりしていけるんだろ? 保」
「いや~、それがそんな訳にもいかないんだ。教授の指示があって、それを片づけないとな。」
「そうか…。仕事なら仕方ないが…」
「ああ、明日の昼前には帰る」
「まあ、今夜はゆっくりしていけ。美味いものでも作らせるから」
「医者から止められてるから沙耶さんは駄目だがな」
 これだけは釘を刺しておかないと・・と思え、保は断言した。
「そうなんですか? お元気そうなのにね」
 怪訝な表情で沙耶を窺(うかが)い、育子が言った。