『どういったことでしょう?』
「実は振込額が少し少ないように思いまして、何かの手違いではないかと電話させて頂いたようなことで…」
『えっ!? そんな馬鹿な…。少々お待ち下さい…』
切川が慌てて受話器を置いて立ち去る音がした。黒原の手には振り込まれた額の明細がいつの間にか握られていた。
しばらくすると、切川は戻り、受話器を取った。
『す、すみません…。見積額と違うようです。どこで間違ったんだろう…』
切川の自戒する呟きが黒原の耳に聞こえた。
「間違いと分かって頂ければ、それで結構です」
『如何(いかが)させて頂きましょう?』
その声を耳にした黒原は、『烏賊(いか)がも蛸(たこ)がもない…』と考えるでなく思った。
「私が直接、そちらへ寄せて頂いてもよろしいですか?」
『それはもう…。御足労をおかけしますが、休診日なら一向に構いませんので…』
支払い額を間違った切川には断る理由が見つからなかった。
続