『もう、よろしいのでしょうか? 先生』
「ああ…。今日は少し疲れたでのう。どうも肩が凝っていかん…」
『お揉みいたしましょうか?』
「おお、そうじゃった。ひとつ、頼むとするか…。里彩よりは効くじゃろうからのう」
「おじいちゃま。私はお茶を持ってくるね」
「おお、これは気が利くのう」
長左衛門が振り返ったときには、すでに里彩の姿は離れの隠れ部屋から消えていた。
『私の機能向上は有難いのですが、いったいどのような?』
「ほっほっほっ…。三井よ、そのようなことは気にせんでいい。X-1号だったお前が三井になった、くらいの変化じゃからのう」
『分かりました。新機能を楽しみにしております。なにぶん、よろしく』
そのとき、里彩が盆に湯呑みと茶菓子を乗せて戻ってきた。
「おお、済まぬのう…」
長左衛門は茶が淹れられた湯呑みを口にすると啜った。上手い具合に運ばれる間に頃合いに冷え、いい飲み加減になっていた。長左衛門は美味そうに啜り終わると、満足げに湯呑みを盆に置いた。機嫌がよかったのは里彩の茶のせいばかりではない。彼には三井の修正プログラム構想が新たに浮かんでいたのだ。ただ、その機能を付加しても、沙耶には及ばないプログラムなのだが、長左衛門は未だそのことに気づいていなかった。沙耶と比較すれば80%程度だが、長左衛門の年からすれば凄い技術力に違いなかった。