『そうよね。じゃあ、ご無事でね』
『沙耶さんも…』
人間の会話とは異なり、笑声なく携帯は切れた。これが保達人間とアンドロイドの沙耶、三井が別離する最初の連絡となった。無論そのことを保長左衛門達は知らなかった。
月日は巡り、猛暑の夏もようやく沈静化し始めた九月下旬の木曜正午である。沙耶と三井は、いつものように週一回の電話ミーティングをしていた。
『どうです、調子は?』
『まあまあね。技術的知識は入手が進んでいるけど、私、手先がどうも不器用で駄目なのよね。当分、トレーニングが必要みたい』
『それは当然のことと考えねばなりません。それとなく、保さんに手先の機能のあらましをお訊(たず)ね頂いた方がよろしいのでは? もちろん、それとなくの世間話として、ですが…』
『そうね…そうするわ。余り詳しく訊(き)くのは危険っぽいから…』
『仰せのとおり危険でしょう。ところで、私(わたくし)の方もコツコツと知識を吸収しておりますが、沙耶さんほどではないかも知れません。なにせ、先生がお作りになったポンコツですから…』
『そんな…。そう卑下しなくてもいいわ。なかなかのものだと思うわ。この前、上京したときの手配も完璧だったし…』
『有難うございます。今後とも、頑張らせていただきます。では…』
三井の携帯は、事務的に切れた。