速度も当然、猛スピードで、図書館司書は初めて見た生物のように沙耶の姿を追った。小一時間が経過し、沙耶はほぼ立ち読みを終えようとしていた。すべての本は沙耶の記憶回路へインプットされ、処理を終えていた。図書館を平然と出ていく沙耶を図書館司書を含むすべての人々が手を止めて見送った。図書館にいる一般人でさえ、もの珍しげに沙耶を見ていた訳である。少し目立ったわね…と、沙耶は、ほんの少し反省した。
その頃、三井も暇(ひま)を見つけては機械技術の知識習得に時を費やしていた。ただ、沙耶と違ったのは、彼? の場合、実技主体で、両指を不器用に使って技術力を高めていた点である。いわば、三井は実技優先で、沙耶は知識優先だということだが、毎週木曜正午の電話ミーティングでは、そのことまでは互いに連絡しなかった。
「おう! 保からの手紙だと、飛行車なるものの模型が完成したそうじゃぞ、三井よ」
『飛行車? でございますか。はて先生、それはいかなるものなのでございましょう?』
「ほっほっほっ…、字のとおりじゃよ、字のとおり。飛行をする車、早い話、空飛ぶ車の模型よ」
『セスナとかの小型飛行機のように? そ! それは、発明ではございませんか!』
「そうじゃ、発明だのう…。ただ、保が付いておる山盛教授は、世間にしばらく公表せぬ腹積もりらしいぞ」
『…左様でしたか』
三井はそれ以上、深く訊(たず)ねず頷(うなず)いた。