水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

幽霊パッション 第三章 第三十五回

                

『長居は、すまい…。もうちと熟慮して事をなせ! ではのう…。数分後には、そなたの上司、元へ戻るであろうよ…』
 それだけを云い残すと、霊界番人の声は途絶えた。
「なんだって!?」
 上山にすれば気が気ではない。自分の身が危ういのだからそれも当然で、声もどことなく、か細く不安げだった。
『大丈夫です、課長。数分経てば、戻るとのことです』
 それを聞いて、上山はフゥ~っと安堵(あんど)の溜息を一つ吐いた。事実、そのとおり、上山の狭間異変は数分後に解かれ、元どおりの人間界へと移行した。上山にも戻ったことは、辺りの景観がカラフルなので分かった。
「やれやれ、だよ。うっかり、結論は出せんぞ、こりゃ」
 上山は、自分の声が霊界へ伝わってることに気づき、辺りをキョロキョロと見回しながら云った。
『そう神経質になることはないと思うんですが、軽々しく念じられないのは確かです』
「そうだな…。私と君の地球への影響力は、余りに大き過ぎるということか」
『はい…。まあ、この如意の筆を僕が持っているから、ということでしょう。これが、なければ、そう大したことは出来ないですよ、僕と課長は』
「…だな」
 上山は冷静になろうと腕組みした。当然、幽霊平林も追随する。このパターンは、二人の間で、いつの間にか定着していた。
「私と君とで出来た具体的成果は、武器売却禁止条約だけだな…」
『いや、課長。他にもアフリカ等の内乱、紛争をなくしましたよ』
「ああ、あったあった! 今となっては遠い昔か…」
 上山にしては珍しく、弱音をひとつ吐いた。
『そうだ! 一度、滑川(なめかわ)教授に会われれば? 何か、いいアイデアが浮かぶかも知れませんよ。それに、あれでどうして、教授は想定外のお話もされますから、参考になるかも、です』