水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -76-

 岩口も砂場も異動がないまま春三月を迎えた。神武祭も済み、やれやれ思う間もなく、岩口は四月の例大祭の準備に明け暮れた。去年の例大祭は天候に恵まれたから難なく終えることが出来たが、今年は…と思うと、岩口は気も漫(そぞ)ろだった。
「いよいよ、ですなぁ~」
 クリニックの休診日に祭礼の打ち合わせで訪れた氏子総代の切川が、当たり前のことを当たり前に言った。
「はあ、まあ…」
 当たり前ながらも、事実だから、岩口は紋切り型に返すしかない。
「砂場さんは、どうされると?」
「ボヤ騒ぎの一件は片づいたようですから、近々、入られるとは存じますが…」
「職場では、そのように?」
「ええ、まあ…。入られるときはひと声かけて下さいとは申しましたが…」
「そうでしたか…」
 そんな遣り取りのあと、宮司の岩口と氏子総代の切川との間で、去年と同じように例大祭の打ち合わせが綿密に行われた。その中には当然、天候の三通り、すなわち、安定した晴天の場合、降るか降らないか分からない場合、雨天の場合という、場合分けした対応も含まれていた。ご苦労様なことです。^^