岩口が商工観光部長の設楽(しだら)と煮込(にこみ)が夫婦であることを知ったのは、もう少し先である。ダジャレがよく似ているな…とは思った岩口だったが、まさかそんな関係が身近にあったとは露ほども思っていなかったのである。
「詳しくお話するのは時間がかかりますので、掻い摘んでお話し致します…」
「お聞きします、すまし汁…」
煮込の面白くもないダジャレに、またかっ! と思った岩口だったが、ここはそれ、忍の一字だ…と我慢し、話を続けた。
「実は…うちの妻はPTAの会長をしておるのですが、何かと忙しくなり、今年の七五三の授与所の務めが難しくなりまして…」
「はあ、それで私に来てもらえないかと?」
「ええまあ、そう言ったところでして…」
「構いませんわよ。骨太(ほねぶと)神社でお務めをさせて頂いたお蔭で今の私があるんですから…」
「いやまあ、そんなことはないと思いますが…」
「あります、あります、有馬温泉…」
「はあ、有難うございます…」
岩口はダジャレを我慢しながら、ペコリと煮込に軽く頭を下げた。
続