二十年祭の直会(なおらい)は賑やかだった。なんといっても、参加者が二十人を超えるとなると、必然的にザワつくのは仕方がない。だが、岩口にしてみれば、篠崎(ささざき)家など濃い親戚筋の五名、多くても十名ばかりでいいのだ。あとはどこの馬の骨とも分からない薄い親戚や、縁者親類だったから遠慮して欲しい方々ばかりだったのである。
神主姿から普通の普段着に着替えた岩口が広間に入ると、座はドンチャン騒ぎのような様相を呈していた。それでも祭主である岩口としては低姿勢で参加者に応対しなければならなかった。
「まあ、一杯…」
岩口は一度も顔を合わせたこともない、どこの馬の骨とも分からない中年男の席に近づき、声をかけた。
「ああ、どうも…」
「あなたは父とどういったご関係になられるんですか?」
「私ですか? 私は篠崎さんの奥さんの実家の娘婿です」
「ああそうですか…。篠崎さんの奥さんの実家の娘さんの旦那さん?」
「ええ、こういう者です…」
男は背広の内ポケットから革製の名刺入れを取り出し、中から一枚を岩口に差し出した。よくよく考えれば、亡き父とは全く縁がない赤の他人なのだ。その男が直会に参加していい気分で飲み食いしている。これは明らかに岩口家の様子を探る潜入部隊に違いない…と岩口は考えを深めた。すると、篠崎を前にする岩口は、次第に怒れてきた。
「あっ、すいません。ちょっと用事を思い出したもので…」
岩口は怒りを鎮めようと、男の前から立あがり、部屋の外へ出た。
『次の式年祭から、呼ぶのはやめよう…』
これ以上、紙[骨太(ほねぶと)神社]が鋏[篠崎家関連の男]にチョキチョキ切られてはかなわん…というのが、この男に対する岩口の偽(いつわ)らざる心境だった。^^
続