水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -152-

 今年、岩口は父である久郎(くろう)の直会(なおらい)を務めねばならなかった。岩口は司郎(しろう)である。^^
 直会とは仏教でいうところの法事に当たる。宮司の神社に関係しないプライベートな二十年祭だけに、そこはそれ、年中行事の神事にかかる氏子役員達の直会の方が優先される。だから、社務所ではなく、岩口家の二十年祭は自宅で執り行わることになったのである。
「では、のちほど…」
 軽く会釈し、切川は岩口家の玄関を出た。岩口としては、虫干しの直会どころではない。
 二十年祭に参加する親戚一同を迎える祖霊舎の準備をしながら、岩口はまた考えなくてもいいのに考え始めた。
「これはこれは…。司郎さん、お元気そうで何よりです」
「ああ、どうも…。お久しぶりです」
 久郎の弟の息子、早い話、岩口の従弟(いとこ)である清二郎に声をかけられ、岩口は紋切り型に返した。
「早いもので、もう二十年ですか…」
「はい…私も年を取りました」
「ははははは…それはお互い様です。私も髪の毛に白髪(しらが)が混じり、時折り染めております」
「ははははは…まったく、同じです」
 意気投合したかのように二人は呵(わら)い合った。奥の間では、つい一時間ばかり前にローカル鉄道である蟹鋏(かにばさみ)鉄道の上戸駅からタクシーで到着した父、久郎の従弟の妻の実家の家族数名が談笑していた。祓戸(はらえど)家である。親類とは呼べない実にややこしい親戚縁者である。^^