岩口家は二十年に渡って責め苛(さいな)まれていたのか…という岩口のトラウマにも似た深刻な思いは益々、強まっていった。といっても、亡き父の式年祭をやめる訳にもいかない。
『弱ったな…』
何も弱ることなどないのに、岩口は弱っていた。岩口にとっては一家の危機にも思えた。この考えに固執し始めてから、岩口の暮らしは、どこか重いものになっていった。
「課長、どうされました? 最近、お元気がありませんが…」
課長補佐の砂場がデスクから立ち、課長席に近づいた。
「いや、どうってこともないんですが…。最近、神社の方が忙しいもので、少し疲れが出たみたいです」
「それはいけませんね。切川さんのクリニックで一度、診てもらわれては?」
「ああ、有難うございます。そうします…」
岩口は軽く返し、切川に一度、相談してみようか…と思った。なんといっても切川は[鋏]でありながら、氏子総代として骨太(ほねぶと)神社[紙]に奉仕する役員でもあったからだ。
「これ、やっておきました…」
砂場は岩口が苦手とする数値が羅列された統計データの解析結果のファイルを課長席に置いた。岩口としては大いに助かることになる。
「ああ、どうも…」
部長の設楽(しだら)に急かされた仕事だっただけに、岩口としては大いに助かった。設楽は砂場に囲碁を教えてもらっていたから、設楽→岩口→砂場→設楽という別の意味の三竦みが構成されていたことになる。^^
続