水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -165-

「先だっての話の続きなんですが…」
「はあ…」
 切川は岩口の発想に同調したものの、そういう捉え方もあるのか…と、改めて冷静に考え直していた矢先だったから、曖昧に返した。
「実は町の商店街の福引で妻が海外旅行を当てまして…」
「ええっ! そりゃ凄いじゃないですか、お目出とうございますっ!」
「お目出たいのはお目出たいんですが、この前お話しました私の考えでは、どうも骨太(ほねぶと)神社に危機が迫っているように、と言いますより、私の家族に危機が迫っているように受け止めまして…」
 それを聞きながら、切川は、こりゃ、かなり深刻なトラウマだな…と岩口の心理を推し量った。現実に問題が起きていない以上、岩口の発想を被害妄想と捉えたのである。切川には心理の治療は出来なかったが、大学の履修で単位は修得していたから、最低限の治療知識は身に付けていた。
「ははは…そう深刻になられなくても」
「いや、何かが起こってからでは遅いですから、こうしてお伺いした訳です。なにせ家族上げての半月の海外旅行ですから…」
「はあ、それはまあ…」
「氏子総代でもあられる切川さん、いや切川先生に神社の留守をお願しようかと思いまして…。そうすれば私も安心して家族を引き連れて出かけられますから…」
「お話の趣旨はよく分かりました。お引き受け致しましょう、安心してお出かけ下さい。私も骨太神社のトップ役員ですから、何かあれば困ります…」
 切川は正論を吐いた。