水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -163-

 こうして岩口のトラウマ的な考えに切川が同調したことで、岩口家の危機[私の被害妄想的な発想]は打開される可能性が濃くなった。ただ、岩口家の危機と思えるこの発想は、今のところ岩口と切川だけの秘密裏な考えに他ならなかった。岩口は、悠馬や智花にはとても話せないぞ…と思っていた。話せば岩口家が大混乱に陥ると考えたからである。
 その後、岩口と切川はこの一件を折りに触れて話し合うようになった。ある意味、不思議な話題とも思えたが、他の人々には分からない考えだけに、どことなく秘密めいた楽しみが二人には湧き起こっていた。
 そんなある日のことである。岩口が考える岩口家の危機と思える出来事が起こった。上戸町の商店街の福引で、美登里が特賞の海外旅行をゲットしたのだ。過去、岩口家は家族旅行で紀伊半島の白浜に旅したことはあったが、それは数日のことで、骨太(ほねぶと)神社に影響が出るほどのこともなかった。氏子総代の切川と新しく骨太神社になった神主の月鉾(つきほこ)に留守を頼んで、何か起きたときには緊急連絡してくれるよう依頼しておいたからである。だが今回は、ほぼ半月の長期に及ぶ海外旅行だった。
 この出来事には、日々の務めの労苦をお考えになった骨太神社に鎮座される三柱(みはしら)の神々の岩口家に対する、ある種のプレゼントだった。
『最近、どうも岩口さんには心労があるようですな…』
 天常立(あめのとこたちの)神がそれとなく天照大(あまてらすおおみ)神に語りかけられた。
『そうですわね…。切川さんとお話になっていた内容では、かなり被害妄想に陥っておられるように思われましたが…』
『ですわね…。心機一転して頂かないと…』
 比売(ひめの)神が話にお加わりになり、天照大神に追随された。
『ははは…少し、運を加えますかな』
 このような天界の神々の申し合わせで、美登里は商店街の福引に当たり、特賞の海外旅行をゲットしたのである。いいですねっ!^^

                  続