岩口家の一行が海外へ旅立った後、岩口が被害妄想的に予測した事象が起こり始めていた。まさかそんなことが起きようとしているとは、氏子総代の切川以外の関係者は露ほども知らない。切川にしても岩口の発想に同調したものの、必ずしも確信していた訳ではなかったから、枉事(まがごと)の発生に対して軽く警戒感を抱く程度だった。
その頃、骨太(ほねぶと)神社に潜入部隊である黒原の第一の矢が放たれようとしていた。
『あの…私、黒原と申します。岩口さんの遠い親戚筋に当てる者でして、この前、岩口さんの亡き父であられる久郎さんの二十年祭に出席させて頂きました』
「はあ、久郎様は、私もよく知っている方ですが、それが何か?」
黒原からの電話の応対に出たのは、巫女(みこ)の煮込(にこみ)蕗(ふき)だった。
『ああ、、そうでございましたか…。いや、ちょっと宮司の岩口さんにお訊きしたいことがありまして、一度、寄せて頂こうかと…』
黒原は蕗の存在を想定していなかったから、こりゃ、やりにくくなったぞ…と枉神的に感じた。
「ああ、そうでございましたか。生憎(あいにく)、おぼっちゃんのご家族は海外へ旅立たれまして、不在なんでございますが…」
『ああ、そうでしたか。いや、岩口さんでなくても神社のことをよくお知りの方がおられれば、それで結構なんですが…』
「そうでございますか。では、お越し下さい…」
巫女の蕗からアポが取れた黒原は、しめたっ! と、小さく嗤(わら)った。
「で、いつ、こちらへ…」
『よろしければ、明日の昼前にでも…』
「はあ、それで結構でございます。神社のお役員の方に連絡しておきますので…」
枉事が少しづつ骨太神社に接近しようとしていた。
続