水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

コメディー連載小説 三竦(さんすく)みが崩れた岩口家の危機打開策 -169-

 煮込(にこみ)蕗(ふき)は、岩口に聞いていた氏子総代の切川に、さっそく連絡した。
『はあ、そんな方が、また何用で?』
 切川としては、寝耳に水の話である。
「はい、私もよくは分からないんですが、神社のことでお訊きしたいことがある、とかなんとかおっしゃっておられましたが…」
『そうですか…。その方、いつ頃、神社に来られます?』
 生憎(あいにく)、休診日でない切川には外来の診療があった。切川は少し腕を上げた医療スタッフの砥石(といし)に任せるか…と考えた。切川よりは腕が未熟とはいえ、砥石は、歴(れっき)とした医師国家試験に合格した医者の卵だった。その砥石に数時間でも代診させるのは本人の経験にもなる…と即断したのだった。
「お昼前頃とか…」
『そうですか。分かりました。十一時頃、寄せて頂きます。もし、早く来られましたら、待って頂くようお伝え下さい…』
「分かりました…」
 こうして、岩口家の危機にも通じる骨太(ほねぶと)神社の枉事(まがごと)は、刻一刻と近づこうとしていた。
 次の日の骨太神社の境内である。早朝、留守を守る巫女(みこ)の煮込(にこみ)蕗(ふき)が神社の境内を掃き清めていた。