冷麦の出入口は間口が狭く、人一人が通れるのが、やっとだった。その建て前も外観は少し小奇麗になったが、昔とまったく変わっていなかった。それが友人の中林や保を、ちょくちょく通わせる味になっていた。
「お~い! 帰ったよ」
沙耶がパソコンでテントを検索していたとき、保がマンションのドアを開けた。
パソコンをすぐシャットダウンすると、沙耶は玄関へ出た。アンドロイド機能で瞬間移動できる迅速さが発揮され、ほろ酔い状態の保にはまったく違和感を与えなかった。シャットダウンするためのエンターキーを押し、わずか2秒後に現れたのだから、それも当然といえた。
『あらっ! 今日は飲んできたの?』
「ああ、まあな…」
保は酔いの加減で少し眠気もあり、靴を脱いで上がるとすぐ、バタン! と応接セットの長椅子へ横たわった。
『いつ飛ぶの?』
沙耶は両瞼(りょうまぶた)を閉ざした保にストレートに訊(き)いた。
『んっ? ああ…組立は三日後で、次の日に飛ばそうと教授が言ってた…』
保は眠そうに目を擦(こす)りながら言った。
『そう…。大磯の別荘だったわね?』
「ああ、そうだ…」
その直後、保の寝息が聞こえた。