水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

里山家横の公園にいた捨て猫<始動編> -15-

 その日のマスコミ騒ぎは報道されず、翌日、里山は、やれやれ…と胸を撫(な)で下(お)ろした。だがそれは、波乱の序章に過ぎなかった。
 春の連休前になると、さすがに暑くなってくる。ここ数年、うららかな春・・というのがあったのか? と疑うような初夏の陽気が続いていた。さて、そうなれば、さすがにゴールデンウイークの行楽に出かけるというのも億劫(おっくう)になる。最近まで毎年、出かけていた里山夫婦も例外ではなかった。
「どうだ? 今年は時期をずらすか」
「そうね…。こう暑いと嫌だわ。渋滞もあるし…」
 連休に渋滞はつきものだし、今に始まったことじゃないよ…と小次郎は眠った態で聞いていた。そんな話が交わされていた連休数日前の夜、食事を終えた里山が居間でテレビを見ながら茶を飲んでいると突然、電話がかかった。キッチンで洗い物をしていた沙希代は、「今頃、誰かしら?」と、いつもの落ち着きで電話代の受話器を取った。居間にも電話はあり里山が出ようとしたが、キッチンにいる沙希代の方が近かった・・ということもある。
「はい! 里山でございますが?」
[あっ! 夜分、恐れ入ります。私、先だってご自宅の玄関前へ押しかけましたテレ京の駒井と申します]
「はあ…?」
 沙希代は分からない電話ながらも一応、相槌(あいづち)を打った。