[実はですね。10月から始まるうちの新番組で面白動物の企画がございまして、それにお宅の猫ちゃんを・・と、お電話させていただきました]
「…よく分かりませんので、主人と変わります」
沙希代は受話器を保留にすると、居間へ急いだ。キッチンと居間は目と鼻の先で、電話の内容は里山にも届(とど)いていた。
沙希代が居間の戸を開けると、すでに里山が受話器を取っていた。里山は沙希代に無言で了解した素振りを示した。沙希代はそれを見て戸を閉め、キッチンへUターンした。
「変わりました、里山ですが…」
[あっ! ご主人ですか。テレ京の駒井と申します。夜分にどうも…。実はですね、10月から始まるうちの新番組で面白動物の企画がございまして、それにお宅の猫ちゃんを・・と、お電話させていただきました]
駒井は沙希代に話した内容と寸分違(たが)わぬ話を里山にもした。
「ああ…そのお話でしたか。で、私に、どうしろと?」
[どうしろ・・なんて、とんでもない。私どもに、そのような権限はございません。お断りになっても結構なんでございますが…]
「そうですか。一応、お話だけ聞かせていただきましょうか」
里山は話だけ聞いておいても損はないだろう…と直感した。
「有難うございます。実はですね、かくかくしかじかなんですよ」
「なるほど、かくかくしかじかですか…」
駒井の話は、スムースに里山へ伝わった。