水本爽涼 歳時記

日本の四季をベースにした小説、脚本、エッセイetc.の小部屋です 

里山家横の公園にいた捨て猫<始動編> -17-

[いかがされます?]
「少し考えてみます。本人の都合も訊(き)いてみないと分かりませんので…」
[えっ?]
「いや、なに…。家内にも訊いてみないと」
[ああ、なるほど…。それじゃ、明日の夜にでも、もう一度、かけさせていただきます]
「あっ! 2、3日お願いしたいんですが。なにぶん、ことがことだけに…」
[はあ、まあこちらは撮り溜(だ)めもありますんで、いいんですが…]
「と、いうことは、すぐには放送されないんですか?」
[ええ…。送っていただいてから、Vの審査や編集がありますから、来年の正月明けになると思います]
 里山は駒井に細々と確認し、電話を切った。里山は電話を切ったその足でキッチンへ行った。
 キッチンの沙希代は、まだ食器の洗い物をしていた。
「小次郎のホームビデオを送ってくれってさ」
「ああ、アレね…」
 沙希代は食器を拭(ふ)きながら言った。
「アレ? ああ、アレじゃないが、まあよく似た番組らしい」
「いいんじゃない、撮って送れば…」
「ああ…。顔は出んから、会社の都合には関係ないからな」
 里山はそう言いながら、人ごとのように、いや、猫ごとのようにフロアで眠っている小次郎の顔を垣間(かいま)見た。