「ほらぁ~。ただの猫じゃない。驚かさないでよ」
沙希代は安心したように笑って言った。
『ご主人が言われるとおりですよ、奥さん』
ここは言うべきか…と判断した小次郎は人間語で沙希代に語りかけた。聞いた沙希代の顔が蒼ざめて凍った。
「まあな…。俺も最初は疑ったんだが…。まあ聞いてのとおりだ、小次郎は話せる」
沙希代は蒼ざめた顔で小次郎を凝視(ぎょうし)した。
『そんなに見つめないで下さいよ。照れるじゃないですか』
小次郎は言いながら、バツ悪そうに片手を舌で舐(な)めると、顔へナデナデと撫(な)でつけた。
「猫が話した…」
沙希代は放心したように言った。
「そうだ。小次郎は話せるんだ」
里山は沙希代の肩を片手で撫でつけ、気を鎮(しず)めるように言った。里山はコーヒーを淹(い)れ、沙希代を落ちつかせた。
しばらく時が流れ、落ち着いた沙希代の様子を見届(みとど)け、里山はふたたびカメラを構えると小次郎に力強く言った。
「小次郎! 撮影を続けるぞ。もう一度、話しながら動いてくれ!」
『はい、分かりました…。では、動きます』
その姿と声の一部始終は、すでに回っているカメラに納められた。